エッジコンピューティングを目指した多様なインテリジェントゲートウエイ製品が市場投入されている。ローカルエッジではあくまでデータ収集のみを処理する単機能型ゲートウエイが今までの主流だった。データセンターやパブリッククラウドサイドで集中的にコンピューティング処理(分析等)するのではなく、データとかログが発生するローカルエッジ近くでコンピューティング処理するというニーズが数年前から再浮上してきた。このニーズがエッジコンピューティングのきっかけ。分散から集中、そして分散の市場ニーズの到来といった歴史の繰り返しである。
以下、本題の“エッジコンピューティングニーズ”についてまず解説し、こうしたニーズに応えるべく開発された代表的な海外製品のZPE SystemsのNodegridアーキテクチャーについて俯瞰する。
エッジコンピューティングニーズの市場での高まり
データの集中化と分散化のしくみについて数年前の総務省で作成された資料の1部を以下に図示するが、市場は集中化から分散化へのシフトである。そして、IOTデバイスだけでなく、各種エッジ端末でのリアルタイム処理と詳細な分析等はデータセンターとかクラウドではなく負荷分散処理としてエッジプラットフォームへとシフトしている。
次世代エッジコンピューティングのシステムアーキテクチャーとは
エッジコンピューティングのニーズは今後、ITだけでなくOTの産業分野(社会重要インフラも含む)にも広がる。そして、分散化に伴うネットワーク、セキュリティ、そしてエンドデバイスとの接続インタフェース性の課題が出てくる。そこで、今後、以下の条件が必須条件となる:
・マルチインタフェース(多様なエンドデバイスとの接続サポート)
・マルチプロトコル(エンドデバイスでの異なるプロトコルサポート)
・エッジ処理のアプリケーション(コンテナ環境での実行)
エッジプラットフォームには多種多様なエンドデバイス(IOT等)が接続される。例えば、温度・湿度センサ、光センサ(照度センサ)、WEBカメラ、超音波距離センサ、圧電サウンダ(圧電ブザー)、有機ELディスプレイ、通貨(紙幣、コイン)モジュール等。当然ながら、それぞれはインタフェースもプロトコルも異なる。そしてこれらのエンドデバイスに対応するための環境が必要である。アプリケーションの最適化を図るためにはエッジプラットフォームにはDockerコンテナの実行環境が必要である。
そして、エッジ側で求められるハードウェア性能はサーバやパソコンに搭載される高性能で消費電力の大きいCPUよりも省エネのCPUが適している。
更に、これらのアプリケーションを1つの筐体で実行するためにはストレージ、各種ネットワークモジュールなどのハードウェア、そしてPython等のソフトウェア開発ができるツールの組込みも必要である。
米国ZPE Systems Nodegrid製品のアーキテクチャー
Nodegrid製品は上述のニーズに対応した全ての機能が“All-in-One”で備わっている。
以下、ZPE Systems Nodegridブロック図とアーキテクチャーの詳細仕様を列記する。
(1) マルチインタフェース
豊富なインタフェース仕様:
(2) セキュアなNodeGridOS
マルチインタフェースをNodeGridOSが抽象化し、CLIやGUIでマネジメントが可能。さらに、セキュアなOSとして以下の機能が組み込まれている。また必要に応じて検証済のPaloAlto,Fortinetなどの仮想アプリケーションも導入可能である。
(3) OS上でマネージされた仮想化レイヤー
アプリケーション開発段階においてセキュリティ対策も益々複雑化している。 ZPE Systems Nodegrid製品はセキュアなNodeGrid OS上にユーザアプリケーション空間を用意することで アプリケーションの開発者は、よりビジネスロジックに注力することが出来る。
(4) Dockerが動作するゲストOS空間
Dockerは、アプリケーション開発・配置・実行するためのプラットフォームとして有名で、既に多方面で利用されている。クラウド/コンテナ実行環境に適したアプリケーション開発・運用を実現するアーキテクチャーの代表的なものがマイクロサービス。マイクロサービスはスピード、柔軟性、耐障害性において従来のモノリシックなアプリケーションに比べて優位である。
ZPE SystemsのNodegrid製品が提供するソリューションは、マイクロサービスアーキテクチャーによって疎結合された複数のサービスを1つの筐体でサービスの集合体として取り扱うことが出来る。
(5) AI(機械学習)のデータ前処理に適したPythonのライブラリをサポート
エッジに求められる重要な要素の1つにデータの前処理がある。例えば、機械学習のモデルがクラウド上にあり、そこに対してエッジがデータを前処理なしで送信すれば異常値、欠損値などもそこに含まれることで機械学習のモデルで正しく学習することが出来なくなる。
そのためにエッジではデータの前処理は必須要件となる。ZPE SystemsのNodegrid製品はそのデータ前処理に適した言語としてPythonとNumpy, Pandasなどのライブラリをサポートしている。
参考までに、ZPE SystemsのNodegridとクラウドをシームレスにつなぐOSSライブラリーを紹介する。このライブラリを使えば、6種類ComputeやStorage、Load Balancers、DNS、Container、BackupのAPIを使って
AWS,GCP,Azure、OpenStackなどのクラウドを簡単に操作出来る。
これは、Pythonライブラリ「Apache Libcloud 3.0」で公開されている。
追伸:ZPE Systemsは米国のシリコンバレーに拠点を置いており、既にfacebook、Appleをはじめ多くの企業にNodegrid製品を導入し、本格稼働している。この製品はガートナーが推奨のSASE(Secure Access Service Edge)のコンセプトに基づいている。筆者は国内でもこのコンセプトが主流になると確信している。
以上、
Comments